無所属新人議員の歩み

それでも「地方議員は不要」と言えない3つの理由【2023年の渡辺やすしの新宿区議としての活動の振り返りとあわせて】

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

新宿区議会議員の渡辺やすしです。能登地震を受けて、しばしSNSやHPでの発信を控えていましたが、本日より通常通り情報を発信いたします。

 

 新年最初の投稿では、2024年の新宿区議会議員としての抱負も兼ねて、あらためて「地方議員の仕事とは何か」を考えてみたいと思います。

 私があらためて、このことを考えるきっかけとなったのは、埼玉県志木市議会議員の与儀大介氏の以下の投稿です。

 https://note.com/daioki0430/n/neace9d79ae74?sub_rt=share_b

 与儀議員は、「無料で生活保護申請や警察への告発に同行するレンタル市議会議員」という活動をされている(https://x.com/daioki0430/status/1613890408492470272?s=20)、私が選挙に出る前にお手本にした無所属地方議員の一人でした。

 この与儀議員の投稿では、現状の相対的に高額な報酬をもらう現状の地方議員という仕事は不要であると主張されています。与儀議員が現在の地方議員が「不要」であるとされる理由は一言でまとめると、「地方議員がよく実績であると喧伝し、有権者もそれが地方議員の仕事だと思っていることは、実は地方議員の仕事ではないから」ということになります。具体的には以下に集約されます。2元代表制における地方議員は議決機関であって執行機関ではない。だから、地方議員は喧伝する「公約の実現」は実は首長や行政機関の実績であり、地方議員の実績ではない。

 的を射ていると感じる点も多く、与儀議員の主張を紹介しながら、私が考える地方議員の値打ちについて解説していきます。

議決機関にすぎない議会(地方議員)において、公約(政策)実現することは不可能なのか⁉

 新宿区議会に限らず、ほとんどすべての地方議員は選挙のとき、何かしらの政策を公約にしますし、現職議員のほとんどが、同様に何かしらの公約実現を自らの実績としてアピールします。

 もちろん、私、渡辺やすしもしっかりと2023年に給食費無償化の公約実現をアピールしています。

 https://watanabe-yasushi.tokyo/archives/884

 しかし、与儀議員の指摘するとおり、国会のような議員内閣制ではなく、地方議会のような二元代表制における公約を即座に議員の成果としてアピールすることは難しいという側面もあります。

 国会であれば国政政党は政策を掲げ選挙を戦い、過半数を占めた政党の代表が、国会で内閣総理大臣に選ばれます。当然、総理大臣は政党の代表なので、公約を実現します。こういう状態ですと、確かに、政策が実現すればその国政政党の実績であるといえるでしょう。

 一方、新宿区議会に限らずすべての地方議会では、二元代表制です。つまり、首長(新宿の場合は新宿区長)も、議員もそれぞれ、別の選挙で選ばれ、独立した関係にあります。区長は総理大臣のように議員が選んだわけではないので、議員が掲げた政策がすぐに実行されるわけもありません。また、議員(議会)は区長の提案に対する議決権や、不信任案を提出する権利を有するため、区長を監視・監督することはできますが、議員自体が予算案を編成する権利はないので(区長の予算案を審議して、議決する権利はある)たとえ議会の過半数を占めたとしても、政策を直接実行することも原理的にはできません。

これらの地方議員の実績の難しさについては、現職の新宿区議である、伊藤陽平氏も発信されています。

 では、どうやって議員は公約を実現するのか。大きく2つです。一つは議会で議員提出条例を可決させる。二つは区長がその各議員が掲げる政策を実行しなければいけないように持っていく。ということです。ほとんどの地方議員の実績は後者の「(何かしらの理由で)区長が議員が掲げる政策を実行した」ことをもって、成立しています。

 一般質問で提案する、議会の多数を占めている場合は区長に交渉して政策を実現するように迫る(お願いする)、議場での討論やネットでの発信によって世論を喚起して区長が実現せざるを得ないように追い込む。などが議員が政策実現において行う活動ですが、最大の問題はこれらにはすべて法的根拠がないということです。議会といえば議員が首長に一般質問するためのもの、というイメージを多くの方が持っていますが、そもそも一般質問には予算や条例の審議や議決と異なり法的根拠がなく、(議事録が残る場での首長の発言は重いですが)、極論を言うと、一般質問での議員からの提案を区長が実行する義務はありません。考えると当たり前で、区長も何かしらの政策を掲げ、選挙で選ばれているわけですから、別の選挙で選ばれた議員の政策を実行する義理はありません。

 なので、区長が結果として議員が公約に掲げた何かしらの政策を実現としても、それが議員による法的根拠のない区長への働きかけによるものなのか、それとも議員による働きかけとはなんの関係もなく偶然区長が実現したものなのかを、第三者である有権者が判断できないという問題が浮上します。極端な話、区長の公約をあらかじめ読み込んで、それとまったく同じものを公約に掲げて議員が当選した場合、まったく議員が区長に働きかけなくても、その議員は公約実現率は100%として有権者にアピールすることができます。

 地方議員は本質的には政策を実現できない、という与儀議員の主張は大変正しいと思います。

 だとするならば、地方自治体の政策実現における議員の役割とは何なのでしょうか?

 渡辺やすしは、①区長(区役所職員)の方針と異なる政策を公の議論に置き続ける、②区長(区役所職員)の誤りを正す、③区長(区役所職員)がまだ発見していない課題を見つける、ことに尽きると考えます。

 ①区長(区役所職員)の方針と異なる政策を公の議論に置き続ける

 今年、4月から新宿区で実施される「小中学校の給食費完全無償化」。実は2022年秋の新宿区長選挙では、吉住健一区長はこの公約を掲げず、給食費無償化は落選した対立候補がかかげた公約でした。なので、当初は給食費無償化に対して、区長は全く前向きではありませんでした。むしろ給食費無償化は全国一律であるべきで、新宿区のような富裕な自治体だけが先行して実現するのは平等性の観点から問題がある、と何度も議会で発言しています。(この詳細は、渡辺みちたか新宿区議が発信しています。https://watanabemichitaka.hatenablog.com/entry/2023/11/21/180820)。ですが、23区の多くの給食費無償化は実現されたことを踏まえ、2023年秋には23区でも最大規模で急遽実現することが発表されました。重要なのは、2022年秋から2023年春にかけて、私が当選する前の2023年春、当選した後の2023年夏、秋と、3期連続で「給食費無償化条例」が私と他の会派の区議によって議員提出され(いずれもも議会で否決)、各議員が発信その状況を逐一発信し続けることで、給食費無償化が区民の注目政策であり続けたということです。

 もし、まったく区民の関心が給食費無償化に向かなかったら、情勢が変化していたとしても、無償化が実現されることはなかったと考えます。区長は確かに選挙で選ばれていますが、選挙は4年で1回です。情勢の変化などにより、区長が公約で掲げていない政策を実現が必要となることも多くあります。その際には、やはり、区長の考えとは異なる政策が、議会など公の場の議論に乗っていて、ある程度区民の関心が向いていることが前提となるのではないでしょうか。

 https://watanabe-yasushi.tokyo/archives/969

 https://watanabe-yasushi.tokyo/archives/781

 「高齢者偏重政治を見直す」「敬老祝い金・ふれあい入浴・敬老会を廃止する」という私の公約は区長の政策方針とは全く異なっています。無償化条例に4会派が賛成した給食費無償化と異なり、賛同する区議も全38人中私1人だけです。しかし、本会議の場で議員としてこれらの政策を主張することで、このような考えが、その議員が選挙に選ばれたという意味で、一定の区民に支持されている、ということを渡辺やすしが明らかにしています。答弁への疑問なども引きつづき、発信することで、より多くの区民の注目をこれらの政策に集目続け、政策転換の前提条件を渡辺やすしは整え続けているわけです。

 ②区長(区役所職員)の誤りを正す

 人は誰でも誤りを犯します。区長(区役所職員)だけでなく、もちろん議員(私)も誤りを犯すでしょう。ですから、国会では、内閣・国会・裁判所で互いに監視する三権分立の制度が取られていますし、地方自治体では首長と議会が互いに監視しあう二元代表制が取られているわけです。

 https://watanabe-yasushi.tokyo/archives/815

 https://watanabe-yasushi.tokyo/archives/888

 ワーカーズコープ事業団における職員数水増し請求事件では、当初、新宿区は議員に報告しただけでプレスリリースを巻かず、広く区民に公表していませんでした。それをいち早くこのHPで私が公表し、その後、多くのメディアが報じることになりました。

 私のSNSの発信を通して、この問題に関心を頂いている方々から様々な情報提供を頂き、区が把握していなかった新疑惑を議会で追及し、区が調査を開始し、新聞でも報道されるに至りました。

 もちろん、何をもって「誤り」とするかも、区長と議員で見解の相違もあるので、「①区長(区役所職員)の方針と異なる政策を公の議論に置き続ける」と重なる点も多いですが、区長に「それ間違っていますよ」と「対等な立場で」言える存在は議員しかいません。もし、議員がいなければ、その誤りは放置され続ける可能性もあるでしょう。「絶対的な権力は絶対的に腐敗する」。渡辺やすしはこの警句に深く賛同します。

③区長(区役所職員)がまだ発見していない課題を見つける

 議員が掲げる政策を、区長が実現しないのは、政策的なスタンスが異なるからだけでなく、「単に問題の所在を知らなかった」という例も多くあります。新宿区内には課題が山積していますし、新宿区の隅々に区長とその部下である新宿区職員が目を光らせることは困難です。これは能力不足ややる気が不足しているという意味ではありません。物理的な困難さに加え、役所に縁遠さを感じていて、区役所の職員ではなく、日々、地元の祭りや街頭演説で顔見知りになっている議員にまず困りごとを相談する区民の方は一定数存在するからです。普段は区民と同じように地域で暮らし、区民との距離が近い議員だからこそ、発見できた課題を、区長に伝えるという役割があります。

 https://watanabe-yasushi.tokyo/archives/897

 https://watanabe-yasushi.tokyo/archives/977

 渡辺やすしは、「ベビーシッター助成制度が広報に問題があるため知られていない」「保育園のシーツの持ち帰りが保護者の過大な負担になっている」という問題を、新宿区議会の歴史上、初めて議会で明かし、区は課題があることを認め、改善策を実施しました。先に書いた敬老祝い金などの政策と異なり、すぐに区が対応したのは、政策的なスタンスの違いの問題でこれらの課題が放置されていたのではなく、単に区が「知らなかったから」にすぎません。これらの経験に基づき、区長や区役所職員がまだ発見していない課題をいかに見つけるかが議員の値打ちである、と私は何度もこのHPで主張し続けてきました。

 区長に優越する議員の値打ちは多様性に支えられている

 表現方法は異なると思いますが、すべての(職務に真摯に取り組む)地方議員は①、②、③をそれぞれのやり方で目指すことになりますが、重点の置き方は異なります。選挙の際に首長の推薦を受けたり、基本的に首長の政策に賛同する「首長与党」会派の議員ですと③を重視するでしょうし。「首長野党」の会派の議員ですと、①や②を重視することになるでしょう。ですが、新宿区議会では、ワーカーズコープ職員数水増し請求事件のような問題では与党会派も委員会で問題点を追及しましたし、野党会派の議員も地元に密着した政策課題を区長に提言し、改善答弁を受けていることもあります。渡辺やすしは、「高齢者偏重政治をやめる」という区長の政策方針とは異なる公約で当選していますので、①や②の役割が特に区民から期待されていると考えていますが、住民相談や取材によって発見した③の課題も議会で提言しています。

 ①、②、③の議員の仕事が値打ちを持つのは、議会が区長に比べて「多様性」という点で優越しているからです。当然ですが、区長は1人きりで、区役所職員も皆、区長をトップとするする組織の構成員にすぎません。一方で、新宿区議会議員は全38人の議員一人一人が有権者の負託を得た対等な立場です。たとえ同じ政党・同じ会派に属していたとしても、それぞれ異なる支援者の負託を得て当選しているため、問題意識やスタンスが議員ごとに異なります。それぞれ異なる問題意識を持つ38人の議員が議会に存在するからこそ、区長一人の考え方とは異なるさまざまな民意を議会として伝えることができ、区長と異なる意見を見える化し、誤りを正し、区長が未知の課題を発見すること機能を果たすことができます。反対にいうと、議員一人一人が自分独自の問題意識を失い、会派の長や首長の意向に阿るような活動ばかりに終始してしまえば、与儀議員のいうようにまったく地方議員の値打ちはなくなってしまうでしょう。

 新宿区議会議員には税金から年間1021万円が報酬として支払われています。渡辺やすしや、新宿区議38人がそれに見合う活動をしているのかを決めるのは、新宿区民に他なりません。私はこの記事にあるように新宿区議の「価値」を定義し、報酬分の仕事をしてきた2023年であったと自負していますが、判断するのも区民です。私は、2023年同様、2024年も区議に仕事を逐一記事にして「見える化」していきますので、区民の皆さまにとっての「地方議員の値打ちとは何か」を考えるきっかけにしていただけますと幸いです。

 

渡辺やすしの2023年感動の外食マイベスト10皿を紹介!前のページ

富久町のタワーマンション公開空地における自転車違法駐輪について【渡辺やすしの住民相談】次のページ

関連記事

ピックアップ記事

  1. 新宿区の住民サービスはあまりにも高齢者偏重です。

最近の記事

PAGE TOP