こんにちは。
新宿区議会議員の渡辺やすしです。
先日、新宿区議会第4回定例会が終わりました。
渡辺やすしの一般質問については、以前に質問内容を公開しました。
「保育園のシーツ等の持ち帰りにおける保護者の過剰負担について」と「ことぶき祝い金・敬老会の見直しについて」が私の質問テーマでしたが、本日は「ことぶき祝い金・敬老会の見直しについて」の区長答弁を振り返ります。議会でのやり取りは私の一般質問と区長答弁だけですが、区長答弁を私がどのように受け止めているかもあわせて解説いたします。
なお、一般質問の様子は、ネット中継を録画したものをこちらから見ることもできます。
一般質問の前提となる、「敬老祝い金」
「敬老会」の問題点については、こちらにまとめていますので、あわせてご覧ください。
1.「ことぶき祝い金」および「高齢者訪問」での現金の贈呈における、政策目的と効果をお聞かせください。また、様々な人生の節目がある中で、長寿のみに祝い金を贈呈することは、世代間で不平等であるという指摘についてはどのようにお考えですか?
区長答弁「ことぶき祝金と高齢者訪問は、区内在住の高齢者の方の長寿をお祝いする事業です。特に、ことぶき祝金は民生・児童委員が直接、お一人おひとりを訪問して配布しており、地域の高齢者と顔をあわせるきっかけとなっています。こうした活動が地域での高齢者の見守りにつながっているものと考えています。ことぶき祝金は、若い方でも、その年齢になれば対象となるものであることから、不平等であるとは考えていません。」
【渡辺やすしによる解説!】
ことぶき祝い金には、8317万円の税金がかかっています。直接訪問で「お一人おひとりを訪問して配布しており、地域の高齢者と顔をあわせるきっかけとなっています」ことに一定の意義は感じますが、1年に一回高齢者と民生・児童委員が顔をあわせる機会をつくるのに、8317万円の税金を投入する意味についてまったく説明されていません。現金を手渡しせず、敬老のお祝いの言葉を直接述べるだけではいけないのしょうか。
また、若者も長寿になれば敬老祝い金の対象となるので、世代間不平等ではないという意見も疑問です。現在、少子高齢化による今後の財政状況の悪化を理由として、全国的に敬老祝い金をはじめ、さまざまな住民サービスの見直しが行われています。今の若者が長寿になるころには、敬老祝い金も見直されている可能性が強く、一刻も早く敬老祝い金を中止しないと世代間格差は開くばかりです。
2.多くの自治体が同様の祝い金を見直すなか、新宿区としても全国的にも珍しい70歳での祝い金の贈呈の見直しを検討されませんか?
区長答弁「この間一貫して平均寿命は延びており、還暦や古希など、これまで長寿のお祝いとされてきた節目が、社会通念にそぐわなくなってきています。こうした時代背景や近隣区の状況も踏まえ、ことぶき祝金のあり方については、調査・研究をしてまいります。」
【渡辺やすしによる解説!】
23区のすべてで長寿のお祝いとして、節目に金品を贈呈する「敬老祝い金」施策は行われています。ですが、古希(70歳)で、金品を送っているのは新宿区と港区の2区だけです。平均寿命が80歳以上をこえる現在で、敬老とお祝いとして70歳で敬老祝い金を送ることは特に合理性がなく、廃止すべきだと主張してきました。「古希での長寿のお祝い(敬老祝い金を渡す)が社会通念にそぐわない」という新宿区の問題意識を確認できましたし、見直しについて「調査・研究する」という前向きな答弁もいただきました。この点については評価します。
3.敬老会に税金を使って芸能人を呼ぶ、政策目的と効果をお聞かせください。
区長答弁「敬老会は77歳以上の方の長寿を祝い、演芸等にご招待する事業です。高齢になると、足腰が弱る方も多く、遠出する機会も減少する傾向があります。そのため、ご自身で演芸等を鑑賞する機会も少なくなってきます。区の敬老会では、多くのご高齢の方においでいただくため、あらかじめ手厚くスタッフを配置しています。歩くのに自信のない方も安心して参加出来る貴重な機会となっています。 実際に敬老会に参加された方からは、お帰りの際に「ありがとう」「すごく良かった」などの声を多くかけていただき、毎年、アンケートの結果でも大変好評をいただいております」
【渡辺やすしによる解説!】
この答弁と質問はかみ合っていません。新宿区では日々、さまざまな芸能人による演芸(コンサート)などが開催されています。その中にはもちろん、高齢のファンを中心とする芸能人もいます。それらのコンサートでも当然に歩行に不安を抱える高齢者への対応はされると予想されるため、多くのスタッフを配置した演芸ができる、ことだけを理由として2000万円以上の税金をかけて、芸能人を呼ぶ演芸会を新宿区が開催する合理性はないと考えます。また、開催費用は敬老会に参加している高齢者の方だけでなく、現役世代や敬老会に興味がない高齢者の方も含めた区民全員が納めた税金で賄われています。政策効果の検証においては、単に参加した方々の満足感だけでなく、他の高齢者施策に2000万円を投入するよりも、敬老会に投入したほうが、高齢者全体の満足感に寄与している、という客観的なエビデンスが必要です。
4.予約システムなどを充実させることで来場者を事前に把握し、敬老会の規模と予算を適切な規模に縮小させませんか?
区長答弁「敬老会は、昨年度から事前予約制による全席指定としていますが、今年度は新たにグループでの予約へも対応したことが好評でした。高齢者の方には往復はがきや窓口での対応の方がなじみ深いことから、予約システムの導入は考えておりません。」
【渡辺やすしによる解説!】
令和5年は3日間午前午後の6回開催されましたが、会場の新宿文化センターのキャパシティ1802人に対し、一回当たりの平均来場者は約540人。コロナ対策のため、開催日が2日から3日に拡大したことは承知していますが、コロナ禍前に行われた令和元年の敬老会でも平均来場者は約1000人と、新宿文化センターのキャパシティを大きく下回っています。このことへの問題意識と規模の縮小についての回答がないことは「答弁漏れ」だと私は考えます。その場ですぐに指摘し、再質問するべきでしたが、その場で指摘することができなかったのは、私のミスでした。今後、精進します。
5.ことぶき祝い金、敬老会とも政策を継続する前提として、当事者である高齢者も含めた区民が本当に望んでいるのか、区民意識調査を実行されるご予定はありませんか?
区長答弁「敬老会では、参加された方に、アンケートによりご意見を伺っています。また、ことぶき祝金については、民生・児童委員など、地域で活動されている皆様から、状況を丁寧にお聞きしています。 したがって、別途、大規模な調査を実施する予定はありません。」
【渡辺やすしによる解説!】
区民意識調査については、敬老会に参加している当事者だけでなく、参加していない高齢者についても意識調査をして、高齢者施策のお金の使い方として、高齢者の方は本当に2000万円を敬老祝い金に使うことを望んでいるのかを調査しないと意味がありません。質問の前段として、「平成26年に静岡市が実施した市民意識調査では、「敬老事業の個人に対する贈呈を縮小し、市全体への高齢者施策への充実を検討すること」に対し、市民全体で約73.5%が、70歳以上に限定しても71.2%が「賛成」「どちらかといえば賛成」であると回答しています。新宿区でも事業継続の前提として、市民意識調査を行うことが必要です。」と私は議会で述べていますが、この答弁はこの指摘を無視したものです。また、敬老祝い金などは将来、敬老祝い金をもらう予定となっている現役世代も本当に望んでいるのかということをあわせて調査しなくてはいけません。
70歳での敬老祝い金の支給については見直しに向けて、前向きな答弁が取れたことは一歩前進です。ですが、皆さまは「敬老会」「敬老祝い金」に関する政策効果と目的など、区長の見解を聞いて本当に納得されましたか?私は全く合理的な説明がなされていないと考えます。逆説的な議論になりますが、敬老会や敬老祝い金の抜本的な見直しにむけては、まず、現在の政策効果や目的が曖昧なものである、という事実をこの一般質問で引き出せたことが成果だと思います。
新宿区民の世論を喚起し、選挙のときの公約に掲げた「敬老会」「敬老祝い金」の廃止に向けて、渡辺やすしは、これからも予算決算特別委員会や議会などさまざまな場で訴えていきます!
一般質問の成果やさらなる詳細は、12月13日(水)に開催する区議会議員バーで直接皆様にお話しします。
参加希望の方は公式LINEまで事前にご連絡いただけますと幸甚です。