こんにちは。
新宿区議会議員の渡辺やすしです。
現在、予算特別委員会の最中で、日々、朝から夜まで議論を重ねています。インターネット中継もされていますが、予算特別委員会の成果については、また随時報告します。

議会では、「生物多様性保全のために、森林に対して新宿区が果たすべき役割について」、「 再び、保育施設でのシーツ等の持ち帰りが保護者の過大な負担になっている現状について」を質問しましたが、本日は「生物多様性保全のために、森林に対して新宿区が果たすべき役割について」の成果を報告します。
議会質問の動画は、議会HPから見ることもできるので、よろしければご覧ください。
また、「保育園のシーツ持ち帰りについて」の大きな成果は先日、記事でご報告しておりますので、ご確認お願いします
令和7年度新宿区当初予算案では、6182万5千円を投入し、伊那市と沼田市の「新宿の森」について、新たに約3haの植林を行い、CO2の年間吸収量を令和7年度には380 t-co2まで吸収量を拡大するとされています。平成21年から新宿区では、区内排出のCO2量の一部を相殺するカーボン・オフセット事業のため、伊那市、沼田市、あきる野市に、「新宿の森」を開設し、森林の保全や適切な管理を支援してきました。
今回の拡充は、新宿区のCO2排出量実質ゼロを2050年までに目指す令和3年の「新宿区ゼロカーボンシティ表明」や、2030年度において区内のCO2排出量を平成25年度比で46%削減する中期目標を定めた、令和5年の「新宿区第三次環境基本計画改定」を具体化するものであると考えます。
確かに、平成30年に公表されたIPCCの特別報告書では「気温上昇を2度より低い、1.5度に抑えるためには、2050年までにCO2の実質排出量をゼロにすることが必要」とされ、令和2年10月の内閣総理大臣の所信表明でも「2050年温室効果ガス実質排出ゼロ」が宣言されるなど、気候変動対策が日本のみならず国際的な課題となっているため、今回の「新宿の森」を拡大する施策については、気候変動対策としては一定の評価をします。
しかし、持続可能な地球環境のために、森林が果たす役割には、CO2吸収による気候変動対策だけでなく、生物多様性の保全という側面があることも、重要です。
令和4年の生物多様性条約第 15 回締約国会議では「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択され、2030 年までに「生物多様性の損失を止め、反転させ、回復軌道に乗せるための緊急の行動をとる」という目標が掲げられ、わが国でも「地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律」が本年4月1日より施行されるなど、生物多様性の保全も、日本のみならず国際的な課題となっています。
森林は日本の国土の約7割を占め、生物相が豊かな日本では陸域では最大の生物種の宝庫です。林野庁の令和6年の「生物多様性保全に資する森林管理のあり方に関する検討会」の中間とりまとめでも示されているように、生物多様性の保全に一層配慮した森林管理を実践することで、多様な動植物の生育・生息空間として森林の質を現状より高める林業経営が求められています。
「新宿区としては、森林管理の支援や、森林資源を使用するさまざまな施策において、「生物多様性の保全」を配慮する必要性を認識されていますか?
新宿区長答弁「生物多様性保全のために、森林に対して新宿区が果たすべき役割についてのお尋ねです。はじめに、新宿区として森林管理の支援や、森林資源を使用する施策において、「生物多様性の保全」を配慮する必要性の認識についてです。
区では、平成30年に策定した「新宿区みどりの基本計画」で、生物多様性を「多様な自然環境とそれぞれの環境の中で生きている多くの生き物とのつながり」と定め、重要な視点の一つと位置付けており、緑化施策の各分野に生物多様性の視点を組み込み、様々な機会を捉えて生物多様性の保全と普及推進を図っています。
また、伊那市、沼田市、あきる野市の3つの市と連携した「新宿の森」整備事業はカーボン・オフセットを目的として取組を開始したものです。 この事業での下草刈りや間伐を通じて、健全な森林の育成を進めることは、生物多様性の保全に寄与するものと考えています。今後、3つの市と生物多様性の保全に関して情報交換を進めてまいります」
新宿区によって森林保全が支援されている「新宿の森」では、CO2吸収量は各都道府県の森林CO2吸収評価認証制度により確認されています。しかし、「新宿の森」の生物多様性の保全については、現状、第三者により確認されていないことは問題です。そもそも、各自治体が森林法に基づき作成する森林整備計画では、生物多様性に特化した項目はありません。また、森林整備計画には生物多様性の保全につながる指針は示されていますが、第三者からの評価を必要としません。森林の持続可能性の評価としては、FSC認証、PEFC認証、という第三者機関による世界的な森林認証があり、生物多様性の保全もその審査基準となっています。
そこで、「区民から集めた森林環境譲与税の一部を使い運営される「新宿の森」において、生物多様性の保全に配慮するため、FSC認証やPEFC認証の森林認証を取得されるつもりはありませんか?
新宿区長答弁「次に、「新宿の森」でのFSC認証やPEFC認証の取得についてです。「新宿の森」を活用したカーボン・オフセット事業は、森林管理によりCO2吸収量増大を図ることを目的として行っています。「新宿の森・沼田」と「新宿の森・あきる野」は、それぞれの森の整備を委託している「利根沼田森林組合」と「公益財団法人 東京都農林水産振興財団」が国内の森林管理に関する認証制度であるSGECの認証を取得しています。この認証はご指摘の国際的な認証であるPEFCと相互認証となることから、2つの「新宿の森」は既にこの森林認証を取得していることとなります。
この認証取得には、多角的かつ、きめ細かな森林管理計画の策定が求められ、多くの事務作業と時間を要することから、沼田市、あきる野市の森を整備するそれぞれの団体が群馬県、東京都の支援を受け、認証を取得したものです。
一方、「新宿の森・伊那」については、森の整備を委託している「上伊那森林組合」が認証を受けていないことから、「新宿の森・伊那」は森林認証を取得していませんが、伊那市からは、今後、県など関係団体と認証取得に向け相談していきたい、と聞いています。森林認証の有無が直接、CO2の吸収量に影響を及ぼすことはありませんが、今後も、「新宿の森」を整備している団体や、3つの市と連携しながら、適切な森林管理を進めていきます。」
新宿区の区有施設は老朽化に伴う大規模改修や建て替えの時期を迎えているものも多く、特に本庁舎については、「庁舎のあり方庁内検討会」で老朽化が進む現庁舎の課題が整理され、議会でも建て替えを含めて検討が進められています。区有施設の大規模改修や建て替えにおいては、型枠や建物の内装について大量の森林資源が使用されます。
確かに、新宿区第三次環境基本計画改定では、区有施設の新築や建て替えにおいては建物のエネルギー使用量の約50%以上を削減している建物であることを第三者が証明するZEB Ready相当を目指すとされています。しかし、ZEB Ready認証は省エネルギーによるCO2削減策としては有効ですが、使用される森林資源が生物多様性の保全に寄与するかどうかの視点はありません。
浜松子ども館や南三陸町役場など多くの公共施設の建築で取得された、生態系の機能を守る森林資源であることを証明するFSCプロジェクト認証を、ZEB Ready認証とあわせて取得すれば、CO2削減に加え、生物多様性の保全にも寄与できます。また、エネルギー性能に特化せず、建築に使われる原材料をはじめ総合的な建築物の環境性能を評価する、LEEDやCASBEEなどの環境認証を取得することも、生物多様性の保全に有効です。そこで、最後に「本庁舎など区有施設の建て替え課題の整理においては、LEED、CASBEE、FSCプロジェクト認証など、生物多様性の保全に寄与する環境認証を研究し、今後の建て替え時の認証取得を検討されませんか?」
新宿区長答弁「次に、区有施設の建替え時における生物多様性の保全に寄与する環境認証の取得の検討についてのお尋ねです。
環境配慮の取組は大切であると考えており、令和5年2月に改定した第三次環境基本計画において、施設の新築又は建替え時には、省エネルギー対策を徹底し、原則として「ZEB Ready」相当、大規模建築物の場合は「ZEB Oriented」相当を目指しています。また、これまでも区有施設の建設にあたっては、伊那産や多摩産などの木材の活用に努めており、現在整備を進めている牛込第一中学校の建替えでは、多摩産材を活用する予定です。
ご指摘のFSCプロジェクト認証やCASBEEなどの環境認証について他自治体の取得事例を研究するとともに、区有施設の建替えの際には、環境に配慮した施設となるよう取り組んでまいります。」
今回の一般質問では、新宿区議会の歴史上はじめて、森林認証について取り上げましたが、すべての「新宿の森」における森林認証の取得、および区有施設の建替え時における環境認証について、前向きな答弁を引き出しました。ただ、「現役世代に優しい新宿」という以上、次世代の現役世代に持続可能な環境を維持することも私の責務であると考えています。これからも「選挙で票にならない」環境政策に切り込む新宿区議として活動していきますので、応援お願いします。