こんにちは。新宿区議会議員の渡辺やすしです。突然ですが、皆さんは、重回帰分析という統計手法をご存知でしょうか?
重回帰分析とは、ある結果を説明する際に、関連する複数の要因のうち、どの変数がどの程度、結果を左右しているのかを関数の形で数値化し両者の関係を表し、それを元にして将来の予測を行う統計手法のことです。一つの結果に対し、予想される要因が複数ある場合でも、他の要因の影響を取り除いて、それぞれの独立した要因が、どの程度、結果に影響を与えているのかを、分析できるというメリットがあります。
現在、EBPM(証拠に基づく政策立案)が各自治体で話題となっていますが、今回は、渡辺やすしのもとに寄せられた住民相談を、この重回帰分析を用い、解決した事例をご紹介します。
新宿区の29校の区立小学校の校庭は、それぞれ、人工芝、天然芝、ダスト(土)、ゴムチップの材質で構成されています。そのうち、ある区立小学校のPTAでは、校庭での怪我が多発するのは校庭がゴムチップだからではないか、と問題になり教育委員会に校庭改修の要望が寄せられ、私にも住民相談が寄せられました。教育委員会からは、校庭の改修については、順次、緊急度や優先度を考慮して計画的に進めており、部分的に補修が必要な箇所などは適宜対応しているとの説明でしたが、私は、怪我の発生と校庭の材質との関係性を統計的に明らかにできないかと考え、教育委員会と協議しました。
各区立小学校で怪我が発生した場合、重大事故は各学校から教育委員会へ報告が行われますが、それ以外の転んで擦りむいたなどの軽傷の怪我については、各校での記録にとどまっており、怪我の総数についての集約データありませんでした。そこで、教育委員会へ依頼して、令和5年度の学校別の怪我の発生件数を集約してもらい、統計的に怪我の発生件数と材質との関係性を示すことができないか、重回帰分析を私が独自に行うこととしました。
以下、要因のことを説明変数、結果のことを目的変数と記載します。
具体的には、「新宿区立小学校別の校庭での事故発生件数」を目的変数としたうえで、説明変数に「校庭がゴムチップか否か」「校庭が人工芝か否か」「校庭がダストか否か」「校庭が天然芝か否か」「児童数」「校庭の広さ」「最後の校庭改修からの年数」に設定し、それぞれの影響力を調べました。「ゴムチップか否か」については、ゴムチップであれば「1」、ゴムチップでなければ「0」と設定しました。人工芝、ダスト、天然芝の変数についても同様です。
その結果、今回の回帰分析で得られた回帰式全体が、どの程度目的変数を説明できているのか、という決定係数(重決定R2)は0.58、自由度調整済決定係数(補正R2)も0.42、確率分布上での確率値(有意F)は0.002と一定の統計的に有意な結果が導きだされました。個別の説明変数がどの程度目的変数に対して、影響があるかを表す指標はP値になります。分析ツールのデフォルトの信頼度設定を95%とした場合、P値が0.05未満であれば、その説明変数は目的変数に対して「関係性がありそう」という判断されます。今回は、「人工芝か否か」が0.02、「校庭の広さ」が0.002で、目的変数に対し、有意な説明変数であった一方、「ゴムチップか否か」は0.19と影響がないことが確認されました。
詳細な統計結果は以下をご覧ください。
この結果を保護者に伝えたところ、「ゴムチップ校庭によって児童の怪我が増えたとは言えない」という統計的な結果に納得され、教育環境への不安感が解消されるという成果をあげることができたと考えています。
新宿区のシンクタンクである新宿自治創造研究所は、EBPM(証拠に基づく政策立案)の活用について、「PDCAサイクル活性化型」「EBPM公民連携活用型」などを提言しています。年次計画のような大局的な自治体経営にEBPMを活用することも必要ですが、今回のような現場レベルでの小さな行政課題の解決においても統計的分析手法は重要であると考えます。特に、行政課題においては、一つの結果に対し、複数の要因が考えられることが多いため、単に数値を見比べるのだけでなく、重回帰分析を行い、影響がある要因とない要因を確定させることが重要です。
重回帰分析は民間企業においてはマーケティング部門などで一般的に多用されていますし、大学の学部生レベルの統計知識があれば、Excelを使って、安価に短時間で行うことができます。
6月12日(水)より、新宿区議会第二回定例会がスタートし、渡辺やすしは6月13日(木)午前11時からの一般質問に登場予定です。
前回の記事でご紹介した「吉住区長の小池知事への出馬要請の問題点」を追及する質問加え、今回の成果をもとに、現場レベルの行政課題に対するEBPMの実践として、重回帰分析などの統計的な手法を活用する必要性を認識について区の姿勢を確認するほか、統計学の職員研修を行ったり、統計学に関する資格習得を支援したりすることなど提言します。
かつて、昭和の時代の住民相談は、「自分の子供だけ優先して保育園に入れてほしい」「自分の子どもが通う小学校だけクーラーをつけてほしい」など、利益誘導型が中心でした。ですが、少子高齢化の中、ますます限られた税金を友好に使わなくてはいけないという認識が全国民的となり、現在、渡辺康のもとに寄せられる住民相談のほとんどが利益誘導ではなく、自分が発見した問題を横展開させ、区民全体、新宿区全体の役に立ててほしいという思いによるものがほとんどです。
渡辺やすしは区議会議員として、区民の皆さまが日々の生活で発見した問題の種を、区と交渉により「データー」を入手し、「統計分析」によりその問題が普遍的なものであることを明らかにし、行政を動かしていきます。これからも、皆さまの身近でお困りごとがあればお気軽に住民相談をお寄せください。渡辺やすしがデータをもとに客観的な社会問題と紐づけ、区民生活を「少しマシ」にするお手伝いをしたいと思います!