こんにちは。新宿区議会議員の渡辺やすしです。
9月17日の新宿区議会令和8年第三回定例会の代表質問で、私から「金利のある世界」における新宿区の基金運用改革について質問しました。区長答弁を分析し、渡辺やすしの「成果」を振り返ります。
新宿区が保有する基金は、令和7年度末で約568億5,000万円。
この大切な区民の財産を、ただ「減らさない」だけでいいのか。
金利も物価も上昇する時代に合わせて、安全性を確保しながら、もっと効率的に運用できないのか。
この問題を取り上げました。
「100億円が100億円のまま」でも価値は減る?
日本では長年、超低金利が続いてきました。
そのため自治体の基金運用でも、収益を上げることより、「元本を減らさない」ことを最優先する考え方には一定の合理性がありました。
しかし、時代は変わりました。
金利が上昇すると同時に、物価も上昇しています。
例えば100億円の基金が、1年後も帳簿上100億円だったとします。
一見すると、1円も減っていません。
しかし、その間に物価が2%上昇すれば、100億円で購入できる物や行政サービスは減っています。
つまり、名目上のお金は減っていなくても、その「実質的な価値」は低下しているわけです。
そこで私は区長に、
「基金運用における安全性とは、元本を減らさないことだけなのか。インフレの中でも、将来世代に引き継ぐ区民の財産の実質的価値をできる限り維持することまで含むのではないか」
と質問しました。
これに対して区長は、
「基金の名目額が維持されていたとしても、物価上昇率を下回る運用が継続した場合には、実質的な購買力という観点から基金の価値が低下する場合があるものと認識しています」
と答弁しました。
これは今回の質問で、非常に重要な答弁だったと思います。
「元本が減っていなければ大丈夫」ではなく、インフレによる基金の実質的な価値の低下についても、区長が明確に認識を示したからです。
新宿区の運用利回りは0.32%。23区を独自調査!
では、新宿区は基金をどの程度運用できているのでしょうか。
令和7年度の基金運用利回りは0.32%。運用収入は約1億7,800万円でした。
利回り自体は、令和5年度0.14%、令和6年度0.22%、令和7年度0.32%と改善しています。
この点は評価しています。
一方、今回、新宿区議会事務局と連携して東京23区の基金運用状況を独自調査しました。
基金全体の利回りについて回答があった区では、板橋区0.73%、目黒区0.64%、中央区0.57%、世田谷区0.55%など、新宿区を上回る区が過半を占めました。
もちろん、基金の使い道や取崩し時期、債券を購入した時期などが違うため、単純に利回りだけで自治体の優劣を決めることはできません。
だからこそ重要なのは、「なぜ違うのか」を研究することです。
区長からは、
「今後も他自治体の先進的な取組や運用事例について、引き続き調査・研究を行ってまいります」
との答弁がありました。
預金・債券・満期を「最適化」して運用収益を高める!
今回、特に求めたのが、基金ごとの資金需要を踏まえた運用の最適化です。
近いうちに使う基金と、長期間取り崩す予定のない基金では、同じ運用方法である必要はありません。
預金と債券をどう配分するのか。
債券を何年保有するのか。
いつ満期を迎えるようにするのか。
どの金融機関に預けるのか。
こうした点を基金の将来の取崩し予定とセットで考えるべきです。
これに対して区長は、
「預金と債券の配分、債券の年限や満期構成、預金先などの最適化により、引き続き運用収益を高めてまいります」
と明言しました。
ここは一つの成果だと考えています。
基金約568億円ですから、仮に運用利回りを0.1ポイント改善できれば、単純計算で年間約5,700万円。0.2ポイントなら約1億1,400万円の違いになります。
もちろん、自治体が基金で投機をするべきではありません。
私も株式や外国債券などでリスクを取ることを求めているわけではありません。
安全性と、必要なときに現金化できる流動性を確保することが大前提です。
その上で得られる運用収入を増やせるなら、区民に新たな負担を求めることなく生み出せる財源です。
一方、「ベンチマーク」「外部専門家」は見送り
もちろん、今回の提案が全て受け入れられたわけではありません。
私は、市場金利や国債利回りなどを参考に、毎年度の運用実績を客観的に評価する「ベンチマーク」の導入も提案しました。
しかし区長は、
「新たな仕組みの導入は考えていません」
と答弁。
また、23区中9区で活用されている外部の公金運用アドバイザーや有識者の活用も提案しましたが、これについても、
「現在、外部有識者の活用は考えていません」
との回答でした。
一方で、区が過去に監査法人と公金運用に関するコンサルティング契約を結び、専門的な助言を受けていたことも今回の答弁で明らかになりました。
ここについては引き続き検証していきます。
「元本を守る」だけから「区民の財産の価値を守る」へ
今回の質問で私が一番伝えたかったのは、基金で儲けよう、という話ではありません。
基金は区民の財産です。
だから安全性は絶対に重要です。
しかし、金利も物価も上がる時代に、30年前、20年前と同じ発想で運用を続けることが、本当に区民の財産を守ることになるのか。
ここは不断に検証する必要があります。
今回、区長から、
「実質的な購買力という観点から基金の価値が低下する場合がある」
との認識と、
「預金と債券の配分、債券の年限や満期構成、預金先などの最適化により、引き続き運用収益を高めてまいります」
という答弁を引き出しました。
「元本を減らさない」だけではなく、「区民の財産の実質的な価値も守る」。
そして、安全性と流動性を大前提として、今ある約568億円の区民の財産に最大限働いてもらう。
そこで生まれた運用収入を、区民サービスとして還元する。
これからも「金利のある世界」に対応した、新しい自治体の基金運用を求めていきます。













